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日華事変・北支からの便りと写真帳(No,2) [写真]

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 近衛工兵連隊倉田部隊小山隊(第一小隊)隊長の陣中便りと写真帳
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  石家荘・道路拡張工事



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  石家荘・道路拡張工事の説明書き

  
   『 写真の裏書き 』

   これは第一現場の方です。

   有効幅員二十米、盛土斜面は全部煉瓦張り。現在大方完成。

             昭和十二年十二月十八日  太郎



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   『 小山 次郎様 宛 』

   今 石家荘に於いて都市計画に基ずく道路拡張工事をやっています。お手廻しのよいの

    には呆れます。また小山式の仕事が残ります。今度の仕事は一寸大規模で兵隊の仕事に

   は相当な大物です。苦力を百人使っています。土工量だけでも七百立坪(埋立て)、

   家屋(煉瓦造り)取り壊し無数と言っておきます

   日中零下八度。中空高く「アドバルーン」は「割共滅党新政府成立」と報じています。

   地には五色旗(上より赤黄青白黒)が戸毎に掲げられ、「慶祝南京陥落新政府成立」の

   アーチが各所に立てられています。

   坂倉の負傷は左手中、薬、小の三指が相当大きく、胸、大腿部は軽傷で元気である。

   自筆の手紙を寄越した。年内一杯には退院すると力んでいる。保定第三兵站病院 将校

   患者室坂倉理喜雄少尉で行くから見舞いを出すとよい。中に佐野上等兵戦死(実によく

   戦った。二十八人で敵二百をやっつけた。敵は死体三十八、軽機二、小銃十八、青龍刀

   多数を残して壊走した。)悼んで置いてくれ。

   鈴木信久君の隊号、田中さん御子衆の名を知らせて下さい。学校の皆さんによろしく。

                         昭和十二年十二月二十日  太郎



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   『 写真の裏書き 』

   石家荘循環新路小山街 長さ三千米、幅有効二十五米 作業中 



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   『 写真の裏書き 』

   小山街作業場にて



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   『 写真の裏書き 』
   
   石家荘小山街の完成せる一部

   左の方に円をかいて見えるのが在来道路。前方水平に見えるのは北支随一

   軍用道路(但し在来)獲鹿街道 巾12.5米


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   『 小山 次郎様 宛 』

   二十日附航空便は二十三日に拝見。色々と有難う存じました。愈々今年も押つまったわけ

   ですが、こちらはそんな気が致しません。今も相変わらず道路構築です。一人で二現場

   持って苦力五百人も使役しています。景気がよいです。

   巾員側溝を含んで三十米、直線で三千米。なかなか面白くやっています。蓋し独り舞台

   です。新政府成立以来街はすばらしく活気を呈して参りまして、雑踏甚だしきものあり。
   
   各商店も一斉に「ショーウインドー」を飾りたてました。町には既に「日本語自習書」

   なるものを売っています。子供などは相当日本語を覚えて終いました。

   あと南京、済南間にある残敵を掃討するのが最後の戦いでしょう。陣中一同相戒め乍ら

   も時には凱旋話に花を咲かせる時があります。然し、この頃は一応観念してあまり調子

   が出ない様です。好い傾向です。

   正月には忙しくも飯能に行って、岡野や荒川、大和などを呼んで適当に願います。

   こちらからは年賀郵便は出せませんから各方面に宜しく願います。

   では御機嫌よく御越年を祈る。

                         昭和十二年十二月二十八日  太郎



   『 小山 次郎様 喜美重様宛 』

   謹賀新年

   遥かに北支陣中よりお二人の御多幸を祈ります。

   こちら門松も立て陣中には思いがけない立派なお正月を迎えました。

   皆一段の緊張を以って昭和十三年の初春を祝っています。

   寒さの折、ご自愛を祈る。

                    昭和十三年元旦  太郎

       

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   『 小山 次郎様 宛 』

   年頭の祝辞は本日落手しました。十二月二十八日附(航空便)は一日に郵便局に着いて

   いましたが、元旦は局の取扱も休みで二日に入手。本年度の一番乗りです。

   二十五日附のお葉書は四日に着いています。こちらの元旦は相当なるものでした。

   五時に私は起きて先ず黙想。同室の笹生伍長と当番を起して軍歌(対匪行)の練習。

   六時、小隊全員を起床せしめ(起床時限は六時三十分)ました。七時四十分本部前広場

   に東面して整列、初日の出と共に捧銃。遥に皇居を拝し聖壽の萬歳を三唱し奉る。

   八時、本部に於いて幹部会食。お互いの健康を祝して乾杯。後は祝宴に還る。

   宴途中にして組(苦力を提供している組)に趣きて馳走になり、夕刻より日本料理店に

   出向き、夜は十時に帰りました。

   二日は夕刻より自室に匪族(中隊の呑助をかく称す)の襲撃を受け応戦、出動。結局

   十一時に及ぶ。

   三日より作業開始、昨日に至りました。

   昨夕、敗残匪討伐の命を受け明日より五日の予定を以って出発します。(私の小隊だけ)

   今晩は出陣の前祝で今(八時三十分)夕食を済ませた所です。十五日には現地に帰還す

   る予定。其の後は亦々前作業続行。

   来月は再び南方へ進出(先ず最後の行動でしょう)の予測です。

   坂倉は二十九日に包帯姿痛々しく無理に退院して来て終って任地唐河橋梁に行きました。

   まだ無理だと思うが、彼氏も張り切り屋だから仕方ありません。

   昨朝は零下十六度、地表は一尺五寸位凍って来ました。この分では二十度へは間近いと

   思います。三寒四温式の気候で、今日あたりから又温に廻りましたから討伐中は温かで

   済みそうです。帰って来たら又おたよりします。皆さんに宜しく。

   今日は珍しく十二時前に寝てしまいます。 いつも書物で十二時、一時になります。

   内地も厳寒の折、ご自愛を祈ります。

                           昭和十三年一月九日   太郎



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   『 写真の裏書き 』

   断崖上に立てる歩哨(討伐中) 一月十一日



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   『 写真の裏書き 』

   討伐に行きて堂々日章旗(私の寄書国旗)の下に立てる歩哨

   北杜村宿舎上  一月十二日



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   『 写真の裏書き 』

   北支には珍しい清い川 渉縣附近にて

   仔犬は第七代目飼い犬



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   『 写真の裏書き 』

   昭和十三年一月十五日 於石家荘

   敗残匪討伐より帰りて(右より板橋上等兵、小山少尉)



   『 小山 次郎様 宛 』

   十日から敗残匪の討伐に出かけて今夕(十五日)帰ってきました。

   「のれんに腕押し」その儘で完全にすっぽかしを食らってしまいました。
 
   十一日の晩は相当銃砲声旺んでしたが、これとて兵匪に出会ったわけではなく、毎度

   乍ら討伐では拍子抜けです。帰って来て、十一月十日付、一月七日付のお手紙を入手し

   ました。古い方のは袋が切れていたのに出雲大社のお札が半分出かかって、脱落せずに

   ありました。有難いと思いました。

   六日に飯能に出かけられた由、ご多用中有難う。岡野や荒川も喜んだ事とおもいます。

   戦場では工兵暇なしで、明日からは又 作業続行です。余り商売繁盛もいささか考え

   ものらしいです。

   討伐は無収穫でも宣撫で能率を挙げてきました。別れに臨んで根拠地にした村では、

   「太君去石門市 村人有惜別離

    恋々情難押 村人為太君不開路」

   と言って別れを惜しみ亦

   「村民人等知貴軍昼夜辛抱

    軍紀大規律欲與貴

    隊長送二個〇〇一遍

    額以揚大徳」

   と言っていました。其の中何か届けて来るようです。

   その揚句忙しい所を送別会を催されて、支那酒、支那料理の厚遇を受けて来ました。

   之も亦話の種です。

   坂倉は無理して退院。今は新楽橋梁についている。随って第二小隊半部亦我指揮に入る。

   これで現在二ケ小隊と、苦力五百人とを毎日こなす勘定です。

                        昭和十三年一月十五日

                              北支派遣加納部隊

                              倉田部隊小山隊 小山太郎
 

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   『 写真の裏書き 』

   昭和十三年一月十八日

   河北省獲鹿縣北杜村に於いて日華親善の記念として

   向かって左より

   熊谷上等兵、青木伍長、武田衛生兵、白世明、板橋謙治

   彦田上等兵、劉志仁、劉俊彦、小山隊長、橋本軍医、白世傑、笹生伍長



   『 小山 次郎様 喜美重様 宛 』

   十日附御書面本日落手。

   九日大広間大入り満員の盛況嬉しく存じました。

   今日は作業場から先日討伐の時宣撫した部落を訪問し、夜遅く帰って来ました。宣撫も

   愉快なもので、亦割に簡単に出来ます。但し、一々筆談で意思の表現が相当なものです。

   特に困るのは文字の使用法ですが、これが、内地の漢文流では不好的(ポスペン)です。

   然し、習うより慣れよで、書くだけは近頃名文句続出で、向う側が困る位です。

   まごまごすると損を踏んじゃったりして、我乍ら「甘いな」と感心する様です。但し、

   一番困るのはで飲んでる時、如何に酔っても、話は全て鉛筆に依る。其の外は、ただ

   「ウンウン」より外に手なしです。今日あたりも最後の挨拶は次の通りです。

    我們與貴村人相交僅再三日。

    然相親如斯。

    惜別太君之情難忍。約他日再会。

    由今我祈天貴村繁昌。

    人間別離是天也。

    要将来村人協力於我們建設

    東亜永久和平。招来民生幸福。

    我們既嚮貴村人厚遇将満肚。

    時既夕頃我欲辞村別

    石門市我們偶。謝々。

   かくて帰還の途に就けば村人老若男女、路に総出で、覚束なき挙手の礼をします。

   それもその筈、今日も又、軍医を帯同して施療をしてやりました。

   支那人には薬は実によく効きます。伝え話にある以上です。

   然も今回は「できもの」の切開手術まで施してやったのです。せむし。つんぼ。斯か

   る不治の難病でもアスピリン位で効力(彼等は神効という)を発生して終うのですから

   困ったものです。

   後の小宴で卵のどぶづけには閉口しました。味は良いですが、臭気相当なるものがあ

   ります。道路の方は凍結の為、なかなか進捗せず。

   坂倉は前便にも書いたと思うが、既に戦線にあり。

   最近の写真出来次第に送ります。

   小久保は金州の病院に護送せらる。但し、紀元節の頃までには全快する予定。

   今は恩賜の清酒を戴きました。隊員から(東京附近)お手紙の礼が毎日きます。

   「アドバルーン」は「改善庶政提高民生」と告げています。昨日は小雪。今日は黄塵

   萬丈。皆元気です。内地も今年は大分寒いとか。ご自愛を祈る。

                        昭和十三年一月十八日

                              北支派遣加納部隊

                              倉田部隊小山隊 小山太郎
 


   『母上様 かよ殿 宛 』

   其の後皆様お変わりありませんか。

   こちらは相変わらずです。去る十日から討伐に出かけて、十五日に帰ってきました。

   十六日に宮岡が尋ねてきました。十二月の五日に出した手紙が一月十二日に着いたと

   平沼保夫さんから返事が来ました。

   毎日例に依って、道路構築作業です。土が一尺五寸も凍っていますから、この頃は

   火薬を使ってはねかしています。写真を送ります。裏書きの通り届けて下さい。

   内地も今年はなかなか寒いとか。皆様御身お大切に。

                           昭和十三年一月二十日   

                                      太郎

                         岡野君、田畑君によろしく



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   『 小山 次郎様 宛 』

   厳寒の候お変わりありませんか。こちらは相変わらず元気です。

   十九日に宮岡が尋ねて来ました。共に健在を祝し、大規模に飲みました。

   写真を送ります。大型の方一枚は飯能に届けて下さい。

   工事は地表凍結の為、進捗遅遅。爆破によって作業を続行しています。

   気温 マイナス十五、六度。一同元気よし。

   まだ送りたい写真がありますが、目方の都合にて後日に譲ります。

   ご自愛をいのります。皆様によろしく。


                    昭和十三年一月二十三日
タグ:写真
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